
大変な看護師の仕事ですが、看護師ならではの素晴らしい瞬間に出会うこともあります。
今回は、私が看護師を続けることができた、ハンカチにまつわるお話です。
長引く術後
60代後半のある女性が膵臓癌の手術で入院されたのは、もみじが色づき始めたころのことでした。
膵臓癌はサイレントキラーとも呼ばれ、見つかった時には相当進行していることも多く、今回も例外ではありませんでした。
特に膵臓癌のオペは手術の中でも大きなもので、術後もしばらく大変な時期が続きます。
ドレーンといって術後からだに溜まる体液を外に出すための管もたくさん入りますし、動きづらい入院生活になります。
膵臓癌を切除したために、血糖値のコントロールがうまくいかず、入院生活が当初予想されていたよりも大幅に長引いていました。
術後ということもあり、あまり体を動かすことはできませんが、もともと裁縫が得意だったそうで、時々刺繍をしながら過ごされていました。
今ではミシンが当たり前のように使える時代ですが、その患者様の時代はミシンはあれど、まだまだ手縫いすることが多かったそうです。
趣味の域とは思えないほど、本当に素敵な刺繍をなさっていました。
緑の刺繍
ようやく退院できそうな目処が立ってきて、退院まであと数日、というある日、私がその患者様の担当になりました。
日勤が終わって帰る前に患者さまに挨拶しに行くと、白地に緑色の刺繍が目立つガーゼのハンカチをそっと。
「何も包まずにごめんね」
そう言われながら、顔を合わせた看護師それぞれに手縫いの素敵なガーゼハンカチを手渡していかれました。
刺繍の色も全部違って、看護師一人一人のイメージで刺繍してくださったのだそうです。
「いつの間に?」
ハンカチに刺繍されているところは見かけたことはありませんでしたし、他の看護師も気付かなかったようでした。
ハンカチ
今となっては分かりませんが、看護師を驚かそうとこっそり見つからないようにされていたのかもしれません。
ハンカチの緑色の刺繍を見ると膵臓癌で大変な手術を乗り越え、術後も頑張っていらっしゃったその患者様の姿をいつも思い出します。
看護師は大変な仕事だと思いますが、看護師でしかできない経験もたくさんあると思います。
大変なことがあるたびに握りしめるのは、緑色の刺繍が施されたハンカチです。
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